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連合赤軍は俺が撮る(628asahi)

映画監督 若松孝二
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 無言のまま、固い決意の念をありったけ届かせようとするまなざしの圧力を、なんの心づもりもなく受け止めてしまったために、酢優の大西倍満(32)は密かにうろたえていた。
 若松孝ニ(72)の『稟録・連合赤軍 あさま山荘への道程』で、連合赤軍幹部の坂東国男役を演じだ大西は昨年末、名古廃駅の間近にある名画座「シネマスコーレ」で、封切り初日の舞台あいさつに立っていた。
 古びた雑居ビルの1階にあるシネマスコーレはわずか50席しかない。元は炉端焼き屋だが、83年に廃業して売りに出されたのを若松が買い取り、自前の劇場にしているのだ。
 圧力の源は座席から身を乗り出し、泣きはらした日で抱きすくめるように大西を凝視する、化粧っ気のない初老の女性だった。彼女は不意に駆け寄ると、こう語りかけてきたという。
 「私はあの時代に血を流し損ねたの。その落とし前をつけるために、今朝はこの事を切り、血を流してから鬼に来ました」
 傍らにいた劇場支配人の本金純治(59)は、心の高ぶりを鎮められない形相に、新左翼運動に身を投じた過去を引きずっているに違いないと直感した。
 このとき、大西とともに劇場を訪れていた若松も、連字を求める彼女の右手の甲に大げさに絆創膏が張られていたことを生々しく記憶にとどめている。いま思えば、それをはがすと、大義に添い遂げられなかった不全感にしがみつかれたままの過去を呼び戻す、決意の藍痕のような傷跡があったのだろう。
 『実線・連合赤軍』を撮り急いだ動機として、若松がしきりに引き合いに出すのは、02年に公開された映画『突入せよー・「あさま山荘」事件』である。
 元審察官僚で72年の事件当時、現場に派遣された佐々渾行の原作を基にした『突入せよー・』を見た若松は、「スクリーンに爆弾を投げつけたかった」ほど憤慨したという。寄集機構のヘゲモニーをめぐる暗闘を措く『突入よ!』は「映画は権力者の視点から撮らない」という若松の主義に背いていたし、なによりも連合赤軍を不気味な殺戟者に仕立てあげていた。
 連合赤軍は粛清のリンチで12人の同志を殺害。長野県軽井沢町の山荘に立てこもり、銃撃で贅察に抵抗した。新左翼運動を破観させたこの事件を、若松は「俺なりに落とし前をつけなくちゃならないから」撮ったのだという。ストーリーの軸を連合赤軍の自壊に絞りこみ、番茶は添え物のような役回りだ。
 「彼らが狂気に駆り立てられた道筋を丹愈に措いてやらないと、不条理な死を遂げた若者たちが浮かばれない。内部でなにが起こったのか、それを知っている映画監督は俺しかいない。だから、どっちみち俺は撮らな
きゃならなかったんだ」
新宿でヤクザになる
 かつてセックスと暴力を過激に融合したアナーキーなピンク映画を畳摩し、反権力の漢学として細められた若松は「腹が立つから、映画を撮りたくなる」という。人生そのものが、皮膚をひりつかせるような怒気にまみれた反逆の表現者だ。宮城県連田郡の農家で、男ばかり7人兄弟の六男に生まれた若松は、地元の農薬高校畜産科に進学すると、札付きの不良で鳴らした。中学のころ、公民館の巡回映画で見た黒澤明の『姿三四郎』に感動して柔道部に入
り、黒帯の腕前だった。高校1年で3度も、けんか騒ぎで停学処分を科された揚げ句に中退、家出して上京する。百姓仕事から逃れたい一心でもあった。
 東京の下町で、和菓子の聯見習いやドヤ暮らしの日雇い働などを渡り歩いたが、や叫 かり7人兄弟の六男に生まれた若松は、地元の農業高校選 に進学すると、札付きの不良で鳴らした。中学のころ、公民館の巡回映画で見た黒澤明の『姿三四郎』に感動して柔道部に入り、黒帯の腕前だった。高校l年で3度も、けんか騒ぎで停学処分を科された揚げ句に中退、家出して上京する。百姓仕事から逃れたい一心でもあった。
 東京の下町で、和菓子の職人見習いやドヤ暮らしの日雇い労働などを渡り歩いたが、やがて正業に就く生き方に幻滅する。
 「かりんとう工場で働いていたとき、田舎から集団就職で来ていた仲間が油の煮えたぎる箋に落ちて死んでしまった。ところが、なんの補償もなく使い捨てられたって聞いて猛然と腹が立ったんだ。そんな人生なら、太く短く生きてやるぜって」
 住みこみの工場を飛び出し、ってを頼って新宿2丁目へ流れ者くと、一帯を仕切るテキ屋の組に命を預けるチンピラヤクザになっていた。 =敬称略(保科龍朗)
 わかまつ・こうじ 36年宮城県生まれ。63年に『甘い麒」で監督デビュー。アングラ成人映画のヒットメーカーにたり、「ピンク映画の黒澤明」の異名で呼ばれた。最新作『実録・連合赤軍あさま山荘への道程』で第58回ベルリ
ン国際映画祭の最優秀アジア映画賞などを受賞。


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革命21事務局

はじめまして。
 貴ブログへの突然の書き込みの非礼をお許しください。「運動型新党・革命21」準備会の事務局です。
 この度、私たちは「運動型新党・革命21」の準備会をスタートさせました。
 この目的は、アメリカを中心とする世界の戦争と経済崩壊、そして日本の自公政権による軍事強化政策と福祉・労働者切り捨て・人権抑圧政策などに抗し、新しい政治潮流・集団を創りだしたいと願ってのことです。私たちは、この数十年の左翼間対立の原因を検証し「運動型新党」を多様な意見・異論が共存し、さまざまなグループ・政治集団が協同できるネットワーク型の「運動型の党」として推進していきたく思っています。
(既存の中央集権主義に替わる民主自治制を組織原理とする運動型党[構成員主権・民主自治制・ラジカル民主主義・公開制]の4原則の組織原理。)
 この呼びかけは、日本の労働運動の再興・再建を願う、関西生コン・関西管理職ユニオンなどの労働者有志が軸に担っています。ぜひともこの歴史的試みにご賛同・ご参加いただきたく、お願いする次第です。なお「運動型新党準備会・呼びかけ」全文は、当サイトでご覧になれます。rev@com21.jp
 
by 革命21事務局 (2008-10-14 15:19) 

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