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Noism08(708asahi)

恐くて懐かしい見せ物小屋
舞踏.jpg
 開演前の舞台の闇に人形の白い首がばんやり浮かぶ。金森穣の新作はちょっと恐くて懐かしい見せ物小屋だ(3日、東京・シアタートラム)。
 人形たちは黒子に操られ、ぎごちなく物質的に動きながら濃厚な情感を発散する。横抱きにされて、空中で目覚ましい荒業を見せたりもする。
 支配人(宮河愛一郎)はセーラー服の人形(井関佐和子)と抱き合おうと何度も試みるが、相手は力なくくずおれ、失敗。人間同士の気持ち
の行き違いのようにも見えておかしい。彼は今度は人間の女(高原伸子)に同じことをしかけるが、彼女は強く反発し、座を立ってしまう。
 人形と人間の女同士に奇妙な関心が芽生え、鏡のように同じ動作をし始める。意志と物体、主体と客体が錯綜して、人形も人間も変化し始め
る。人形が人間のように支配人を誘惑し、それを見た人間の女が嫉妬して三角関係、更には黒子が絡んだ四角関係に発展。非情陀嘲泊な人形振りに生々しい苛立ちと執着心が混入し、堅くて鈍い動きがいつか目くるめくダンスになるが、動きの主体はもはや判別しがたい。身体表現の見慣れた地平に未知、の亀裂が生じたような、ふしぎな感覚だ。
 第二幕は人形と黒子の狂宴である。無様なポーズでよろける人形のラインダンスも笑えるが、顔のない黒子らが次質感を覿わにし、舞台を跳梁して不気味だ。すべてを動かすのは、実は彼ら。人間と人形、黒子が入り乱れる中、井関と高原の激情的なソロが圧巻である。最後は元人形の女が生身の血ぬれた裸体で床に倒れる。先行のバレエ作品へのオマ
ージュもあって、いろんな解釈が可能だが、中島みゆきの見事なロバクや巧撒なダンスをひたすら楽しむのもいい。
(佐々木涼子・舞踊評論家)

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